最近の話題について


SU2C's PI3K Pathway Dream Team

Stand Up To Cancerが支援するPI3K経路解明のためのアメリカを中心としたドリームチーム(PI3K Dream Teamで検索するとアクセスできます)のお話です。今、乳癌の研究で最も注目を浴びている領域ですが、施設横断的なドリームチームを、募金を通じてみんなで支援しているという構図です。この領域の超一流の研究者がその意義を語りかけています。

Stand Up To Cancer (SU2C) とは

メテ゛ィア、エンターテーメント、慈善事業のそれぞれのリーダー(かつてガンにかかった方)によって設立されたEntertainment Industry Foundation (EIF) の慈善プログラムです。

 

(Aug.31,2012,in TOKYO)
 

PI3K経路とは

通常、細胞の生存・増殖と、タンパク質合成を促進する経路です。この経路が遺伝子異常により活性化されると、腫瘍の増殖、癌を誘発する他経路との連携、治療抵抗性の獲得などの原因となります。乳癌ではホルモン療法やHER2療法に対する抵抗性の獲得に大きな役割を果たしており、この経路をコントロールすることで治療の大きな進展が期待されています。


2010 年12月にサンアントニオ(USA)で開催された国際会議のトピックスから(今回の会議で最も注目を集めた2つのテーマから)

<1>dual blockade effective
HER2シグナル伝達経路を複数の方法でブロックする方が、単独のブロックより有効だということで、具体的にはトラスツヅマブ+ラパチニブ>トラスツヅマブ あるいはトラスツヅマブ+pertuzumab>トラスツヅマブということが見えてきたということです。これらはいずれも高額の分子標的治療薬ですが、HER2シグナル伝達経路の完全ブロックという方法を当面は目指して研究が進むと思われます。(GEPARQUINTO Trial, Neo-ALTTO Trial, NEOSPHERE Trial)


<2>Azure trial : Negative Results
オーストリアのトライアル(ABCSG-12、1800名の患者さんが参加)の結果でゾメタの再発抑制効果が報告され、非常に期待されていましたが、さらに大規模な3360名の試験結果(Azure trial)では効果が否定されました。詳細なデータ解析はこれからですが、ゾメタを術後補助療法として使うことはまだまだ研究段階であることがわかりました。


<The Z0011 trialについて>

Axillary Dissection vs No Axillary Dissection in Women With Invasive Breast Cancer and Sentinel Node Metastasis JAMA. 2011;305(6):569-575
昨年ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)で注目された試験結果が2011年2月9日論文として発表され注目されています。
試験の概要:センチネルリンハ゜節生検で1〜2個の転移を認めた患者さん(乳房温存手術+放射線照射例)のリンハ゜節郭清を行っても再発率、生存率の改善に貢献しないという話です
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以下は同僚との私的なメールからの引用です
The Z0011 trialは、腋窩転移リンパ節を放置しても、生命予後に影響を与えないかどうかというOncologyの長年の命題に正面から挑んだわけではなく、乳房照射により、下部腋窩が照射野に含まれ、またn(+)ということで、術後補助治療が施行される群の患者には腋窩郭清を省略できるかというpractical な問いに答えを出そうとした試験です。

noninferiority を証明するために1900例の登録と、500例のevents が必要とされています。しかしながら、症例集積が進まず900例で打ち切りになっています(94 events)。この状況でこのデータをどう解釈して、実臨床につなげるかの問題だと思います。(1)術中判断でかなり転移がありそうな症例は腋窩郭清を行う、(2)術中迅速診断で(−)だったが、あとで(+)と判明した程度の症例はそのまま郭清を行わないという対応はコンセンサスが得やすいと思われます。

その他をどうするかということになると思います。個人的には、術中センチネル陽性と出た場合、迅速診での転移の程度、手術所見、腫瘍径、癌のサブタイプ、術前化学療法の有無、本人の体型などを考慮して、リンパ節のサンプリング追加(数個)〜下部腋窩郭清〜レベル1郭清〜レベル1,2郭清という段階的な対応をしています。(現実問題としてサンプリングを追加してもmorbidityに有意な差はないように思います)

The Z0011 trialが不十分なstudyだったため、センチネル+でも生検のみで終わらせることはせず、(術中に判明しているなら)サンプリングあるいはそれ以上の追加手術を加える流れが当面続くと思います。臨床経験の蓄積、cancer biologyの理解、薬物療法の進歩,さらに画像診断、照射技術の進歩が加わり、バランスのとれた腋窩治療がわかってくると考えています。臨床を変えていく重要なtrialだとは思いますが、現場の変化はそれほどdrasticではないと思います。


非浸潤性乳管癌に対する乳房温存療法の妥当性について

In conclusion, we believe that these long-term findings of NSABP B-17 and B-24 demonstrate that lumpectomy and adjuvant therapies are effective modalities for the treatment of DCIS. It is highly likely that current breast imaging practices, improvements in margin assessments, and advances in adjuvant treatments will continue to reduce the incidence of invasive recurrences after DCIS.

非浸潤性乳管癌の2つの大規模な臨床試験の結果が発表されました(the Journal of the National Cancer Institute 2011年3月16日号)非浸潤性乳管癌の治療として乳房温存療法の妥当性があらためて証明されたと言える結果でした。


(Dec.11,2010,in San Antonio)


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