女性化乳房症  乳がんセミナー(虎の門病院編)

 

1. 定義

女性化乳房症は男性の乳腺組織の良性の増殖性変化と定義され、通常エストロゲン活性の増加、アンドロゲン活性の低下、あるいは様々な薬物の使用によって引き起こされる。クラインフェルター症候群のように性分化異常に伴う稀な遺伝性の疾患もあるが、大部分は自然軽快し経過観察のみで治療を必要としない。臨床的には男性乳癌との鑑別が重要である。

2、病態生理

何らかの原因により、乳腺組織の増殖を抑制するアンドロゲンが減少し、増殖を刺激するエストロゲンが相対的に増加することで発症する。

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表1 女性化乳房症の原因

1.生理的乳腺の肥大

2.内分泌疾患に合併  

  睾丸疾患、下垂体・副腎腫瘍、バセドウ病、ホルモン産生腫瘍など

3.性分化異常に伴うもの

   クラインフェルター症候群など

4、その他の疾患に合併するもの

   肝疾患、腎疾患、肺疾患、糖尿病など

5、薬剤性に発症するもの

6、特発性(原因不明)のもの

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2  女性化乳房症の原因となりうる代表的な薬剤

1.ホルモン剤   エストロゲン剤、アンドロゲン剤など

2.抗アンドロゲン剤 アンドロゲン合成阻害剤   ビカルタマイド、ゴセレリンなど

3、抗生剤   メトロニダゾールなど

4、抗潰瘍剤   シメチジン、オメプラゾールなど

5、化学療法剤   メソトレキセート、アルキル化剤など

6、心臓血管薬剤   ジゴキシンなど

7、向精神薬  ジアゼパムなど

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3、原因疾患

原因疾患を表1に分類して記載する。この中では薬剤性の女性化乳房症が多く、身体診察に加え、既往歴・内服薬の聴取が重要である。原因となる薬剤を表2に記載した。

 

4、診断および治療・対処法

身体所見、現病歴・既往歴・内服薬の聴取により女性化乳房症の診断を下す。画像診断としては乳腺超音波、マンモグラフィー検査が乳癌との鑑別に有用である。原因のスクリーニングとして各種ホルモン値も含めた血液検査の実施も検討する。一般に思春期、青年期の女性化乳房症は生理的・特発性の女性化乳房症が大部分を占めで、自然消退が多く積極的治療を要しないことがほとんどである。中高年以降は薬剤性の割合が多く、また乳癌との鑑別を念頭に置く必要がある。薬剤性の場合はリスク・ベネフィットを検討した上で薬剤の中止または変更を考慮する。つまり原疾患の種類によっては、乳腺肥大の原因となっている薬剤が原疾患の治療に不可欠で中止困難であり、副作用としての乳腺肥大は許容して経過観察することが現実的判断となる。特に高齢者は多剤を内服している場合が多く、原因薬剤の診断、またこれら薬剤の中止、変更の実施が困難な場合も少なくない。以上のような経過観察も含めた保存的対応を行っても、疼痛が強く、また整容的に問題がある場合などは手術による乳腺組織の切除も選択肢になるが実施されることは稀である。

 

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